息子が生まれた日 ~その2~

息子が富山県立中央病院に搬送され、数時間後。私はNICU(新生児集中治療室)にいました。

保育器に入り、酸素チューブ、中心静脈栄養(点滴)、心電図や酸素飽和度モニターがされている赤ちゃん。

ベテラン医師から、このような説明がされたのです。
「今、赤ちゃんはお腹の中にいたときからの骨折、それから帝王切開したときの負担で、全身を骨折しています。
これは、骨折をしやすい難病で【骨形成不全症】という病気が原因です。指定難病にもなっています。ご家族に骨折しやすい方がいないのであれば、遺伝子の突然変異で生じることがあります。2~3万人に1人の発症率で、県内にもある程度、同じ病気のお子さんや大人の方がいらっしゃいます。
その子の重症度によって、家族が触ったり、本人がくしゃみをしたりするだけで骨折することもあり得ます。
もしかしたら生涯、直接抱っこすることは出来ないかもしれません。
仮に抱っこが出来ても、生涯、歩けない可能性もあります。
もし歩けるようになったとしても、激しい運動は無理だと思っておいてください。
生涯、寝たきりや車いすである可能性も覚悟しておいてください。
普通にお世話をしているだけで骨折する可能性があります。例えば、オムツを替えたり、授乳するときなどです。
お世話の中で骨折しても、パパやママは絶対に、絶対に、自分を責めないでください。親御さんは悪くないですから。そういう病気なんです。そういった心の準備をして、育児に臨んでください」

わかりやすい説明の中に、とても心のこもったエールが含まれていました。
「出産は、母も子も命がけ。何があるかわからないのが出産」と覚悟していた私。

たくさんの管に繋がれた息子を見て、「この子を守らねば」と思いました。

そして、息子の人生に降りかかった前途の多難を想い、涙が止まりませんでした。

しかしこの子は、頑なに逆子でした。
正常分娩で生まれていたら、産道を通る間に、骨折に伴い、肺なども損傷して死産になっていたかもしれません。

息子が命を芽吹かせられたのは、奇跡だと思いました。

「とはいえ、この子は【普通】とは違う人生を歩まねばならない。ならば親である私たちも【普通】という概念を捨て去ろう」
私は、そう誓ったのです。

息子のいるNICUを後にして、妻のいる病院に戻りました。
妻に、息子の病気のこと、息子が将来寝たきりや車いすの可能性を話し、たくさん泣きました。

家に帰った私は、ひたすら、病気のこと、障害者のこと、福祉のことについて調べました。
そうして疲れ果てたのち、長い長い夜を終え眠りについたのです。

(写真は富山県立中央病院HPよりお借りしています)

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