息子が生まれた日 ~その1~

骨折しやすい病気の息子。
息子は、妻のお腹にいる間、病気どころか性別さえもわかっていませんでした。最後の妊婦健診まで逆子の状態だったので、予定帝旺切開になりました。
手術当日、私は手術台に横たわる妻に付き添っていました。手術室入室前から、生まれて初めての手術と出産の緊張で、感情が昂ぶり涙が止まらなかった妻。手術中、ずっと手を握っていました。メスでお腹が開かれ、赤ちゃんはすぐに姿が見えたそうです。ところが先生が引っ張り出そうとしても、なかなか赤ちゃんが出てきません。赤ちゃんを引っ張る先生の力で、妻の身体もバン!バン!と手術台の上で跳ねるように打ちつけられていました。かなりてこずって、やっと取り出された赤ちゃん。その時、初めて「男の子ですよ!」と伝えられました。
しかし泣き声がしません。私も妻も「赤ちゃんは泣き始めなければ、呼吸を開始しない」と知っていたので、互いに目を合わせ緊張しながら、助産師さん達が赤ちゃんを刺激して泣かせようとしている様子を見守っていました。焦った先生が「小児科の先生呼んできて!」と言って、小児科医が到着する直前、泣き始めてくれたのです。
赤ちゃんが泣き始め、私たち夫婦も安堵で泣きました。
「パパさん、抱っこしてあげて下さい」と、タオルで包まれた赤ちゃんを抱いたときの嬉しさ。忘れません。その後、妻に赤ちゃんを見せ、妻もひたすら喜びの涙を流していました。
私と、保育器に入れられた赤ちゃんは、お腹の縫合を受ける妻を残して一足先に手術室を退出。新生児室の前に待機していた両家の家族と、赤ちゃんの誕生を祝いながら保育器に寝かされた赤ちゃんの様子を見ていました。
そのとき看護師としての感覚で、「赤ちゃんの泣き声って、こんなか弱いもの…かな?しかもまだ酸素が外せない?」と思っていると、小児科医に呼び出されました。
小児科医「赤ちゃんの泣き声や手足の動きが弱く、酸素飽和度や血糖値も低いです。何か異常があるといけないので、大きな病院に救急搬送して、検査してもらいましょう」
私「わかりました。すぐにお願いします」
病室に戻ってきた妻。赤ちゃんは、一瞬だけ酸素を外して妻に抱っこされ、妻の顔の横に寝かせてもらいました。
赤ちゃんを保育器に戻してもらったのち、妻に赤ちゃんの状況を説明。妻も納得。
「怜君、お願いね」そうして、富山県立中央病院の医師が同乗して迎えにきてくれた救急車で息子は搬送されたのです。
急に赤ちゃんと引き離されてしまった妻。病院に一人残された妻の気持ちを想像するだけで、私は胸が張り裂けそうでした。

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